Report.1
キシリトールはお守りの味
ドクトルは以前、会社員をしていたことがある。
マーケティング担当という肩書で、毎朝5時起きのなかなかハードな会社。若かりしドクトルは、しかし意気揚々と出社しては貪欲に色々なものを学ぼうとしていた。
そんなある日。それは、入社して2ヶ月ほどが経った頃。初期研修なるものに赴くべく、同期の新入社員達と4人ほどで電車に2時間ほど揺られて茨城の方に向かっている、その電車の中で起こった。
ドクトル、電車内で謎の体調不良に陥る。何か、気分が悪い…。今朝まで普通にピンピンしていたのに、何だか明らかに体調に違和感がある。次第に吐き気がしだし、さらには、喉に「明らかな異物感」が出てくる。本人いわく「絶対に今、喉に魚の骨が刺さっている」という感覚。
それまでほとんど大した病気もしたことなく、また本人が楽観的なために精神的に追い込まれることもあまりなかったドクトルだったが、この電車という密閉空間の中で起こった非常事態に激焦りする。茨城までの特急電車のため駅と駅の間が長く、なかなか次の駅に停まらないという状況の中であり、ものすごい不安感と焦燥感。幸いにもすいている電車内だったので、車両内をウロウロ歩き回ってみたりして、気をまぎらわそうとする。しかし、見た目は明らかに不審者。同僚も怪訝な顔。何とか目的の茨城の駅に到着。ドクトル、トイレへ直行。しかし、全く吐けない。何も出てこない。結局、その日は本社に連絡し、初期研修は受けずにそのままトンボ返りする羽目になった。
この症状が出始めた後、この後も同じようなことが立て続けに3回ほど起こった。それも、全て電車の中で。さすがに参って医者にも行った。しかし、医者に診てもらっても言われたことは「ストレスでしょう」。喉にも異常なし。出された薬は抗不安薬。要はリラックス薬。全く効かず。
そんな途方に暮れている中、ドクトルはあることに気がついた。
電車の中で症状が出た時に、このキシリトールタブレット系を口に入れてスースー感を覚えると、たちどころに吐き気や喉の違和感が消えるのだ。効果は絶大だ。ある種の発明をした気分になったドクトルは、以来、キシリトールタブレットを吟味し(最初はミンティアを愛用していた)、次第に質の高い商品を開拓していき、結果として現在のこの「大きめでスースー感が長持ちする」「しかも歯に良い」タブレットに落ち着いた。そんなピンチな状況からお付き合いすることになった、お守りのようなキシリトールタブレットなのだった。
(追)この後、とあることからこの症状の正体が判明する。要は「自律神経失調」なるもので、持続的な緊張や疲労などで誰にでも起こりうることらしい。この”喉に魚の骨症状”も典型的で、この疾患にはよくある症状だという。「いやー、気丈に振る舞っていても、身体は正直なんだなぁ」と実感し、改めてやりたくもない仕事に無理矢理精を出すような真似はやめよう、と強く思ったドクトルだった。